適当日記

日常の瑣事を書いています。

新潮社大丈夫か。

 新潮社が変なキャンペーンを始めたようです。百田尚樹の作品を褒めるツイートをしたら図書カードをあげるというものだそうで。百田氏が新潮社から本を出していたことが驚きですが(氏は幻冬舎専属だと勝手に思っていた)、やっぱりしでかしましたね。

 でも、氏に書かせると本が売れるのでしょう。幻冬舎から出た百田尚樹著『日本国紀』は話題になりました。売れたのだと思います。新潮社もその勢いに乗ろうという事なのでしょうが、このキャンペーンなんかは前澤社長や青汁王子と変わらないやり口ではありませんか。極めて下品です。まして、本について良い口コミを金で釣るなど言語道断です。たとえ、冗談めかしたキャンペーンであってもです。

 何部売るとか喧伝する出版社は幻冬舎だけで結構です。新潮社は、ちゃんとしてほしいものです。こんなキャンペーンを出すほどに出版業界が苦しいのかもしれませんが、これは書籍文化の破壊です。みんながお金に釣られて、出される本に対して良い評判しか言わなくなったらどうなりますか。作家は堕落するでしょうし、読者は出版される本を信用しなくなります。ますます本は売れなくなるでしょう。こんなのは悪循環の入り口です。即刻中止してもらいたいと思います。

 新潮社がここまで追い込まれているということがはっきり見えたキャンペーンでした。以前にも新潮社は雑誌の企画でLGBTに関する記事でやらかしています。過激なことを言って注目させる手法でしたが、大失敗に終わったことは記憶に新しいところです。今回も、流行に乗ったつもりが大失敗です。失策続きです。だれかこのキャンペーンを止める人は社内に居なかったのでしょうか。誰にも相談なしに行われたのでしょうか。分かりませんが。

 今の新潮社に、ちゃんと本のことが分かっている人はいるのかどうか。売れれば良いという昨今の風潮に毒されていないでしょうか。そこらへんの出版社とは違うのですから、文化の担い手として誇りを持ってもらいたいです。こんな安っぽいことはやめてくれ!

 ただ、出版社を苦しめているのは読者の側の責任でもあります。もう、読者側にこれまでのような重厚な内容を理解できるだけの学力とそれに向かい合う時間がないということです。幻冬舎の箕輪氏の記事にこんなことが書かれています。以下、引用。

「今までの、いわゆる「本」を見ていると、世の中とズレてどんどん非日常的になっているように思いますね。スマホで読む記事は、さっと読めるでしょう。僕らはそれに馴染んでいる。相変わらず、世の中の多くの本は文字数が多すぎるし、一文が長い。それに普段使わない言葉を使っている。編集者や著者は、それが本の権威だというかもしれないけれど、若い人からすると、時間がかかって読みにくいだけです。なので僕はブログのようにリズミカルに読めることを意識しています。『死ぬこと以外かすり傷』のエッセイは1本、1分くらいで読める。YouTubeと同じ感覚ですね。もう、1つのコンテンツで人を拘束させられるほど、世の中は遅くない。」

https://sotokoto-online.jp/555「ソトコト」(閲覧2019/10/05)

 こんな調子で、どんどん読みやすい方、分かりやすい方へ流れていきます。読者が一目で分かる内容、さらに気持ちよくなれる内容へということになります。確かに箕輪氏の言う通り、世の中のスピード感は早いです。でも、内容がスカスカのものを早く読んだって、お金とそのわずかの時間さえ無駄です。こんな本は、本を読んだぞという達成感と、気持ちよくなった高揚感があるので、何か得した気になりますが、何も変わりません。

 内容を保持しつつ、スマホに勝てる本を目指さないといけないのですが、音が出て画像が動いてするスマホに対し、本という殆ど文字列だけの媒体が勝つのは容易ではありません。