適当日記

日常の瑣事を書いています。

大学を出てどう生きるか

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日本の話ではないですが、中国で薬学部をでてあげパン屋さんになった人が少し話題になっているようです。記事の中では賛否両論あって云々かんぬん・・・とあります。

 本人が幸せなら、自分は全く問題ないと思いますね。学部で勉強したことを仕事に活かさなくとも。勿体ないかどうかは本人が決めることですし、その道を選んだことがのちのちどうなるかは分からないです。ご本人は努力されて薬学部に入られたのでしょうが、結果としてあげパン屋さんになったとしても、選択肢は広かったわけで、あげパン屋さんにしかなれない人生と、あげパン屋さんを選んだ人生とでは納得感が違うと思います。

 この記事を読んですぐ思い出したのが、反町茂雄さんという方のことです。反町さんは、東大法学部を出たのですがその道には進まず、古書業界に入ります。今も東京の神保町にある一誠堂に入ります。その後頭角を現し独立して、古書業界をリードしていきます。文学部で日本文学を学んだ人間ならば、誰でも知っているような超有名な作品の写本を扱われた方です。そのあたりの事情は『古書店の思い出』?でしたか。そういう本があります。古典籍の写本や版本が市場に出回ったとき、どのように買い付けるのか、どんな蔵書家が持っていた本なのかが詳しく書かれています。

 それはさておき、もし反町さんが大学で学んだことを活かして法曹界に入られていたらどうだったでしょう。優秀な方なのでしょうから、法律関係でも優秀な仕事をされたでしょうが、古書界で天下無双の仕事をされた方です。結果論ですが、反町さんは法律関係に行かなくて正解でしょう(たぶん)。学歴不問の古書業界に入ったのはまずかったでしょうか?そうではないです。

 他にもう一人。中国清朝の頃に、段玉裁という人がいます。この人は軍人としては全くダメな人でしたが、考証学の分野で羽ばたいた人です。早々に軍人としてのキャリアを捨てて、考証学の分野をリードします。一説には、陣営地でも調べ物をして本を書いていたとか。軍人としてのキャリアにしがみついていれば、一地方軍人として生涯を送ることになり、後世にその名を知られることは無かったのでしょう。別に段玉裁は名を残したいから考証学に進んだわけではないでしょうが。中国学関係の人は、少し古いことをやろうとすれば(特に漢字関係)、絶対に段氏の研究の恩恵にあずかります。自分も学生のころ、段氏の注釈を使いました。

 出世とかお金もうけとかできる可能性が高い立場にありながら、それに背を向けるということは、周りから見れば勿体ないということになるのかもしれませんが、その道に進むことが本当に正しいかどうかは、分かりません。人生の進路は本人が決めることですし、本人ですらその道が正しいかどうかは分からないまま進むのでしょう。すべては結果論になってしまいます。その時、納得できる選択をしたいものです。