適当日記

日常の瑣事を書いています。

大学院生の就職

 大学院時代の三つ上の先輩が、今年ようやく某大学に研究者として就職されました。その方は34歳です。これでも、研究者としての就職の年齢としては普通かやや早いぐらいかと思われます。分野にもよるでしょうが。博士号を取得されてから、大変苦労されていたので、嬉しいニュースでした。後輩一同でお祝いをしました。

 

 一方で、お世話になった某大学の先生が三年前に退職されました(最近は大学が法人化されたからとか何とかで退官とは言わないらしい)。後進の席を埋めてしまうということで、その後再就職はなさっていません。ただ、その先生は研究者としては引退されず、論文を毎年お書きになっている。潔い去り際だと思います。一昔前までは、国立の教員を退官したら、数年は私立で専任教員として教えるということはしばしばあったそうですが、それだと確かに、若手の席を埋めることになります。最後まで若手のことを思う先生らしさがそこにあります。

 

 今、院生・若手研究者の就職は、分野を問わず大変に厳しく、博士後期課程に進学しない学生や進学後退学する学生もいます。私がかつて所属した研究室の後輩たちも苦しんでいるようです。若手にとって一年の就職の遅れが死活問題になることもあります。もう大半の人がお忘れかと思いますが、職を得られないまま中年になってしまった九州大学の大学院生が校舎で自殺したニュースもありました。そのときの世間の反応は、さっさと自分の能力に見切りをつけろとか、好きな道に行ったのだから自己責任だというものでした。

 

 確かに、そのように言いたくもなるのかもしれません。嫌な言い方ですが、大半の人はやりたいこともできず、会いたくもない人に日々会いながらつらく厳しい労働をしているのですから。これについては私は何もコメントできません。大学院生の苦しさも分かるし、世間の人の辛さも分からなくもないからです。

 

 さて、詳しいことは知りませんが、最近では実務家教員といって民間等で働いていた人を大学において教員として迎えるということがあるそうです。

https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/043/siryo/__icsFiles/afieldfile/2018/05/28/1405040_3.pdf

文科省はこれを促進したいようですね。民間等の知識を大学教育の場で活かすということですが、これは大学院生にとって正直迷惑千万なシステムではないでしょうか。少ないポストがさらに少なくなってしまいます。

 

 本当に優秀な人であれば良いですが、こういったことは往々にしてよくわからない役人や、よくわからないサラリーマンが紛れ込むことになります。彼らの中には修士すら持っていない人もいると思います。そんな人に学生指導ができるのでしょうか。学生は部下ではありません。なんと実務家教員養成専門学校みたいなのも既にあります。

 

社会情報大学院大学 | 実務家教員養成課程

 

 さすが、このあたり目ざとく商売をしかけてくるなあという印象です。どんな下心をもった人材が大学に送り込まれるのやら・・・