適当日記

日常の瑣事を書いています。

アラサーの語源

最近はあまり聞かなくなりましたが(既に死語になりつつある・・・?)、アラサーという言葉がありますね。ほかに、アラなんとかを頭につけて、アラフォーやアラフィフなどもあります(アラ還はちょっと座りが悪い)。このアラサーという言葉について、皆さんはどんな印象を受けますか?自分の印象を正直に申しますと、中年の入り口に立つ年齢とか、責任を持たないといけなくなる年齢などというものでした。どちらかというと、マイナスや重圧などの感じがするイメージです(重圧はちょっとおおげさかも)。

 さて、この言葉はいつごろ出現したのでしょうか。お盆休みがひまだったので、あれこれ調べてみました(ちょっとは夏らしいことをしろよ)。

 アラサーは皆さんご存じの通り、アラウンドサーティーの略です。この言葉は女性誌の『GISELe』(ジセル)が2005年の創刊時に対象読者層を名付けて「アラサー」としたことに始まるそうです。はじめは三十歳前後の女性を指していましたが、後に男性も指すようになります。

 過去の混乱期ならばいざ知らず、現代社会においては長生きする人は100歳を超える時代になりました。そのような高齢の人が当たり前に存在する社会の中で、なぜ30歳前後が注目され、それを指す言葉が出現したのでしょう。30歳前後が人生の一区切りとみなされている現代社会だからこそ、この「アラサー」なる言葉は生み出されたと考えると良いのではないでしょうか。もっと寿命が短い時代ならば、30歳よりももっと若い年齢で人生の一区切りがくるはずです。今の寿命の感じだと、30歳前後に区切りがくるということなのだと思います。

 さて、次の文章にもあるように、女性に迷いが生じやすい年代は今だけでなく、少し前でも30歳前後だったようです。ちょっと古い文章ですが引用します。

 

「私も入行以来十八年間、いつの間にか三十六歳になってしまった。(中略)銀行の女子にとって、ベテランとは恥辱でしかない世界である。」

『婦人公論』(1975)

「夫の反対はあるが、子育てもひと段落した今、再度働きたい、社会に出たい。」

『サンデー毎日』(1964)

「子どもは欲しいが、一人でいることの自由や仕事を優先したいと考えたり」

『女性セブン』(1978)

 

 ただ、今はどうでしょうか。「アラサー」という言葉がうまれて約十五年が経ちましたが(上述の通りアラサーという言葉は2005年誕生)、「アラサー」のイメージはどうなっているでしょう。『GISELe』の編集長は読者の「アラサー」の女性について「雰囲気としてはケイト・モスのようなさりげなおしゃれのイメージ」と語っている。

 つまり、アラサーという言葉は出発点としては、おしゃれで仕事ができそうな30歳前後の女性を指すというものであって、プラスのイメージをもっていたということになります(少なくとも考案者の中では)。いつの間にかマイナスイメージにも使われるようになっていき、ついには死語に近づきつつあるという言葉なのですね。

 

[参考文献]

井上俊・永井良和(2016)『今どきコトバ事情』ミネルヴァ書房